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大阪地方裁判所 昭和49年(行ウ)72号 判決 1978年9月29日

大阪市都島区都島本通二丁目四三番地

(送達場所 同市南区高津町一番丁七二津田ビル)

原告

株式会社東洋興発

右代表者清算人

濱口典慶

同市旭区大宮一丁目一番二五号

被告

旭税務署長 真野新

右指定代理人

上原健嗣

西田春夫

中野清

上野旭

西宮啓介

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

(三) 被告が原告に対し、原告の昭和四五年一二月一日から昭和四六年一一月三〇日までの事業年度分の法人税について、昭和四八年五月二一日付でした所得金額を一億三、五六六万八、七五二円とする決定処分(裁決により一部取り消された後のもの)のうち、二、六四〇万七、五五六円を超える部分を取り消す。

(二) 訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨。

第二当事者の主張

一  請求の原因

(一)  被告は昭和四八年五月二一日付で原告会社に対し、原告会社の昭和四五年一二月一日から昭和四六年一一月三〇日までの事業年度分の法人税の決定処分(以下本件決定という)をした。原告会社がこれについて被告に対し異議申立てをしたところ、被告は本件決定の一部を取り消す決定をした。原告会社がこれについて国税不服審判所長に審査請求をしたところ、同所長はさらに決定処分の一部を取り消す裁決をした。その詳細は別表(一)記載のとおりである。

(二)  しかし、被告の右決定処分(裁決で一部取り消された後のもの。以下本件処分という)には、次の違法事由がある。

(1) 原告会社の本件事業年度の所得金額は、別表(二)の「原告の主張」欄記載のとおり二、六四〇万七、五五六円であるから、本件処分のうちこの額を超える部分は所得を過大に認定した違法がある。

(2) 被告がした本件決定の通知書の送達方法は、国税通則法一二条に違反している。すなわち、被告は、郵便送達によるべきところを交付送達によった違法があるので、右手続上の違法は本件処分自体を違法とするものである。

(三)  結論 原告会社は被告に対し、本件処分のうち所得金額二、六四〇万七、五五六円を超える部分の取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否

請求の原因(一)の事実は認め、同(二)(1)(2)の主張は争う。

三  被告の主張

(一)  原告会社は、住宅経営業等を目的とする法人であるが、法定申告期限までに本件事業年度分の法人税の確定申告をしなかったので、被告は本件決定をした。

(二)  原告会社の本件事業年度分の所得は、別表(二)の「被告の主張」欄記載のとおりであるから、これと一致する本件処分は正当である。

(三)(1)  土地買入高について

(ア) 原告会社は、本件事業年度内に次のように土地((ただし、訴外大津製函株式会社(以下大津製函という)からの買入れは地上建物も含む))を買い入れた。

被告は、買入価額について、番号1の分は契約書記載の金額四、六五〇万円と別途金三〇〇万円との合計額を、番号2、3の分は、それぞれ契約書記載の金額である一、九〇〇万円と一、二四〇万円を、番号4の分は契約書記載の土地代金一億二、〇〇〇万円と地上建物代金九〇〇万円の合計額を、それぞれ買入価額として認定した。

(イ) 原告会社が訴外湖国産業株式会社(以下湖国産業という)に代替地として提供したと称する訴外田中伊蔵所有の土地は、湖国産業が直接田中伊蔵から買い入れたものであって、原告は湖国産業からこの土地を取得するについて何ら費用を負担していない。

また、原告会社が番号2ないし4の買入れのためそれぞれ支払ったと称する別途金なるものは全く存在しない。

(2)  期末在庫高のうち富士見台の土地について

原告会社が大津製函から買い入れた土地(以下富士見台の土地という)のうち、三、一六七・二四平方メートルは、本件事業年度内に売却されなかったので、その期末在庫高は、次の計算式のとおり七、九三九万六、四一七円になる。

(四)  本件決定の通知書の送達手続について

被告は、同通知書を旭税務署で原告会社の当時の代表者訴外岡野弘毅に交付して送達したから、その手続は適法である。すなわち、国税通則法一二条は、書類送達の方法として、郵便による送達と交付送達とを規定し、そのうち、交付送達の場合は、被送達者に異議がない限り、その者と出合った場所で交付して差支えない(同条四項但書)。したがって、被告は本件でも右規定に従って送達したから、何ら違法な点はない。

四  被告の主張に対する原告会社の認否と主張

(一)  被告の主張(一)の事実は認める。

(二)  同(二)のうち、別表(二)について次の点を認め、その余の事実は否認する。

<1>の売上金額

<4>の附帯費用

<5>の期末在庫高のうち(ア)の分

<6>の営業経費

<7>の営業外経費

(三)  同(三)(1)のうち、原告会社が本件事業年度内に番号1ないし4の土地を買い入れたこと、その買入先、土地所在地、土地面積は認めるが、買入価額は否認する。

買入価額については、被告主張額の外に、それぞれ次の価額を加算すべきである。

(1) 番号1の湖国産業の土地 二、九四三万五、〇〇〇円

原告会社と湖国産業との土地売買契約には、契約書記載の金額四、六五〇万円及び別途金三〇〇万円の支払いの外に、原告会社が代替地を提供する約束が含まれており、これに従って原告会社は、昭和四四年一二月、大津市美崎町字萱海道三五〇所在の土地五四三坪を田中伊蔵から二、四四三万五、〇〇〇円で買い受け、これを湖国産業に提供するとともに、右土地取得に伴う仲介料や登記諸費用、盛土等整地費用計五〇〇万円を負担した。このことは、田中伊蔵からの土地買収交渉に当ったのが岡野弘毅であって湖国産業は何ら直接関与していないことや、田中伊蔵との契約成立時に支払われた手付金五〇〇万円の領収証(甲第七号証)の名宛人が岡野弘毅であることから明らかである。

また、被告主張の買入額によると、湖国産業の土地の坪当り価格は約一六万円になるが、原告会社は右土地とほぼ時期を接してその隣にある訴外恒和興業株式会社(以下恒和興業という)の所有地二筆計二〇〇・〇六坪を五、一一一万二、五〇〇円で買い入れており、その坪当り価格は約二五万円である。両方の土地の買入時期、立地条件、規模面積等はほぼ同一であるから、この点から、被告の主張は明らかに誤っているといえる。

(2) 番号2の平井邦芳の土地 三、三〇〇万円

(3) 番号3の安川ふさの土地 二、七六〇万円

原告会社が両名から土地を買い入れたのは、土地の転売先である訴外株式会社滋賀銀行から強い要請を受けたからである。原告会社は、土地を手放すことに難色を示していた右両名に強く働きかけ、契約書記載の金額の外にそれぞれ前記の金額を支払うことでようやく買収に成功した。

(4) 番号4の大津製函の土地 五、〇〇〇万円

原告会社は、大津製函からの土地の買受けに当って、大津製函の専務取締役訴外竹端某に別途金五、〇〇〇万円を支払った。そのわけは、大津製函が、債権者である滋賀銀行から土地代金全額を債務の弁済として持って行かれることを避けるため、このような形式をとることを希望したことによる。

(四)  同(三)(2)について(イ)の富士見台の土地の面積及び計算方法自体は争わないが、額は争う。富士見台の土地の期末在庫高は、次の計算式のとおり、一億一、〇一七万〇、二二一円である。

(五)  同(四)について

被告が本件決定の通知書を旭税務署で岡野弘毅に交付したことは認めるが、それが適法な送達手続であるとの主張は争う。

国税通則法一二条は、国税に関する法律の規定に基づいて税務署長が発する書類を、郵便による送達又は交付送達により、送達を受けるべき者の住所又は居所に送達することが原則であると規定している。ところで、本件では、被告は、当時の原告会社の代表者であった岡野弘毅を旭税務署長室に呼び出し、同署の幹部数人を立ち合わせ、岡野弘毅が税法に無知であることに乗じ、送達手続に対する異議を申し立てる機会を与えず、本件決定の通知書を交付したうえ、同署備付けの交付簿にその受領印の押印を強要した。

被告は、原告会社に対する課税処分及び滞納処分を急ぐあまり、被送達者が住所若しくは居所にいない場合又は正当な理由なく受領を拒絶する場合のような特別な場合に該当しないのに、原則である郵便送達によらないで前記のような違法な交付送達の方法を採ったものである。

第三証拠関係

一  原告会社

甲第一ないし第二〇号証を提出、証人田中伊蔵、同岡野弘毅の各証言を援用、乙第八号証の二ないし四、第九号証の一、二、第一〇号証の各成立は知らない、その余の同号各証(第一、第二号証、第三号証の一ないし三、第四号証の一、二、第五号証の一ないし四は原本の存在)の成立は認める。

二  被告

乙第一、第二号証、第三号証の一ないし三、第四号証の一、二、第五号証の一ないし四、第六号証の一ないし三、第七、第八号証の各一ないし四、第九号証の一、二、第一〇、第一一号証を提出し、証人上野旭の証言を援用、甲第六ないし第八号証、第一一号証の各成立は知らない、その余の同号各証の成立は認める。

理由

一  当事者間に争いがない事実

請求の原因(一)の事実、被告の主張(一)の事実、同(二)のうち、別表(二)について、<1>の売上金額、<4>の附帯費用、<5>の期末在庫高のうち(ア)の分、<6>の営業経費、<7>の営業外経費、同(三)(1)のうち、原告会社が本件事業年度内に番号1ないし4の土地を買い入れたこと、その買入先、土地所在地、土地面積、同(三)(2)の(イ)の期末在庫土地の面積及び計算方法が被告主張どおりであること、以上のことは当事者間に争いがない。

二  土地買入高について

(一)  湖国産業の土地

(1)  成立に争いがない甲第二〇号証、乙第一、第二号証(乙号各証については原本の存在についても争いがない)によると、原告会社が湖国産業から買い入れた土地の価額は四、九五〇万円であることが認められ、この認定に反する証人岡野弘毅の証言は採用しないし、ほかにこの認定に反する証拠はない。

(2)  原告会社は四、九五〇万円の外に代替地やその盛土費用等計二、九四三万五、〇〇〇円を負担したと主張する。

証人田中伊蔵の証言によって成立が認められる甲第七号証や同証言を総合すると、湖国産業が代替地として取得した田中伊蔵の所有地の買収交渉には、原告会社の当時の代表者である訴外岡野弘毅が当り、右土地の手附金の領収書の名宛人が岡野弘毅であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

しかし、成立に争いがない乙第六号証の一ないし三、第七号証の一ないし四、第八号証の一、証人上野旭の証言によって成立が認められる同第八号証の二ないし四、第九号証の一、二、弁論の全趣旨によって成立が認められる同第一〇号証、証人上野旭の証言を併せ考えたとき、これらの各事実だけで、直ちに代替地の買受人が原告会社であると結論づけることは困難である。

また本件に顕われた証拠を仔細に検討しても、原告会社が代替地の盛土費用等を支出したことが認められる的確な証拠はない。

(3)  原告会社は、恒和興業からの土地買入れ価額を援用して、被告の主張を非難しているが、恒和興業からの土地買入れ価額の坪単価が、必ず原告会社と湖国産業との土地売買契約の際の坪単価になるわけではない。

(4)  そうすると、原告会社が湖国産業から買い入れた土地の価額は被告主張のとおりであり、このほかに原告会社が代替地を買い入れたり、その盛土費用等を負担したことが認められるに足りる証拠がないことに帰着する。

(二)  平井邦芳、安川ふさの土地

前掲の甲第二〇号証、原本の存在と成立に争いがない乙第三号証の一ないし三、第四号証の一、二によると、原告会社が平井邦芳から買い入れた土地の価額は一、九〇〇万円、安川ふさから買い入れた土地の価額は一、二四〇万円であることが認められ、この認定に反する証人岡野弘毅の証言は採用しないし、他にこの認定に反する証拠はない。

そうすると、原告会社が右両名から買い入れた土地の価額は、被告主張どおりの価額であるとするほかはない。

(三)  大津製函の土地

前提の甲第二〇号証、原本の存在と成立に争いがない乙第五号証の一ないし四によると、原告会社が大津製函から買い入れた土地の価額は一億二、九〇〇万円であることが認められ、この認定に反する証人岡野弘毅の証言は採用しないし、他にこの認定に反する証拠はない。

そうすると、原告会社が大津製函から買い入れた土地の価額は被告主張どおりの価額であるとするほかはない。

三  期末在庫高について

大津製函から買い入れた富士見台の土地の買入価額は、前記二(三)で認定したとおりの価額であるから、その期末在庫高が被告主張どおり七、九三九万六、四一七円になることは計算上明らかである。

四  本件決定の通知書の送達手続について

(一)  被告が、原告会社の当時の代表者であった岡野弘毅に対し、旭税務署で、本件決定の通知書を交付したことは当事者間に争いがない。

(二)  そうすると、この出会送達が適法であるためには、岡野弘毅に異議のないことが必要であることは国税通則法一二条四項但書の文言上明白である。

ところで、成立に争いがない甲第一七、第一八号証、乙第一一号証によると、岡野弘毅は、この交付送達の際、なんら異議を述べなかったばかりか、本件決定の通知書を受け取ってから二か月以内に被告に対し異議申立てをしたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

(三)  そうだとすると、本件決定の通知書の送達は、同項の定めるところに従って適法にされた有効なものであるというべきであるから、原告会社のこの主張は採用しない。

五  むすび

以上の次第で、本件処分は適法であって、原告会社の本件請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古崎慶長 裁判官 増井和男 裁判官 西尾進)

別表(一)

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